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走りだしてから数分後。
待ち合わせ場所の近くまで来て呼吸を整えると、見覚えのある姿が見えた。
私を合コンに誘った張本人、若葉だ。
「朝丘さん……」
「……榎本さん?」
若葉が目を丸くしてこちらを見た。
うわぁ。若葉、すごい。
露出度が高い紫色のドレスをみごとに着こなしていて、ドレスのすそから覗く銀色のピンヒールがよく似合っている。
それに髪も少しふわっとさせているし、普段しないメイクもしている。
若葉がこんなに大人っぽい格好を着こなすなんてすごい。
ただ今の若葉の格好を見たら、由良たちはなんて言うだろうか、という不安もある。
私はなにも言わずに黙っているしかない。
いっぽうの若葉は、私の姿を見て呆然としている。
やっぱり変だよね、私がこんな格好をしているなんて。
慌てて心の中の自分に言い聞かせたと同時に、若葉が我に返ったように目を大きくさせた。
「あ……え、榎本さん、なんでもないの! ただその格好が似合ってるなぁって思ったからつい……」
両手を顔の前に出して左右に振って笑顔を見せる若葉。
似合ってる? この格好を、私が?
本当なのかと少し疑ったが、彼女の笑顔を見る限り、表情に嘘が混ざっているようには見えない。