☆☆☆

走りだしてから数分後。


待ち合わせ場所の近くまで来て呼吸を整えると、見覚えのある姿が見えた。


私を合コンに誘った張本人、若葉だ。


「朝丘さん……」


「……榎本さん?」


若葉が目を丸くしてこちらを見た。


うわぁ。若葉、すごい。


露出度が高い紫色のドレスをみごとに着こなしていて、ドレスのすそから覗く銀色のピンヒールがよく似合っている。


それに髪も少しふわっとさせているし、普段しないメイクもしている。


若葉がこんなに大人っぽい格好を着こなすなんてすごい。


ただ今の若葉の格好を見たら、由良たちはなんて言うだろうか、という不安もある。


私はなにも言わずに黙っているしかない。


いっぽうの若葉は、私の姿を見て呆然としている。


やっぱり変だよね、私がこんな格好をしているなんて。


慌てて心の中の自分に言い聞かせたと同時に、若葉が我に返ったように目を大きくさせた。


「あ……え、榎本さん、なんでもないの! ただその格好が似合ってるなぁって思ったからつい……」


両手を顔の前に出して左右に振って笑顔を見せる若葉。


似合ってる? この格好を、私が?


本当なのかと少し疑ったが、彼女の笑顔を見る限り、表情に嘘が混ざっているようには見えない。