もし、また君に出会えたなら…。

―数日後――――

今日は配給の日。

早く行かないと沢山人が並んでて貰えないかもしれない。

ケータイはもう使えないし。

そもそも連絡がつかない。

財布を持ってたとしても、お金を持ってたとしてもこの世界ではそれも通用しない。

生き残る事が全てになったこの世界。

でも結局最後はだれでもウイルスに感染して死ぬ。

だから、恋愛だの友情だのそんなの関係ない。

とにかく生きる。

例え、何があっても生き続けないと。
 
あの時、例え世界で一人になったとしても生き抜く。
 
そんなことを話しているうちに、配給される場所に着いた。
 
もっと早くに来れば良かったな。

「あの、すいません。
 
並んでますか?」
 
背後から男の人の声が訪ねてきた。
 
「はい。
 
並んでます。」
 
後ろを向いてそう答えると、
 
「え、美雨?」
 
え、この声って。
 
「理巧?」
 
理巧なの?
 
「やっぱり美雨だ。
 
美雨も生きていたんだな。
 
良かった。」
 
理巧はそう言った。
 
「理巧も生きてたんだね。
 
良かったよ。
 
理巧も配給に来たの?」
 
冷静に答えてるけど私の心拍数は急上昇中。
 
「あぁ。
 
美雨も配給に来たんだな…。
 
それにしても、多いな。
 
俺たちの分まであるか?」
 
確かに。
 
大丈夫かな…。
 

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 




―数10分後―――
 
私と理巧は無事に配給をもらえた。
 
「持つよ。」
 
「え、でも理巧だって沢山持ってるのに…。
 
悪いよ!
 
そんなに重くないし大丈夫だよ。」
 
だから大丈夫。
 
「良いから、1つ貸せって。

俺は男だから良いの。」
 
「……分かったよ、ありがとう。」
 
そう言って1つ理巧に持ってもらった。

………何か気まずいな。

何か話しかけた方がいいのかな?

「ねぇ、理巧?

最近まで何してたの?」

話題がこれしかなくてちょっと食い付き気味になっちゃった。

「最近はなぁ…。」

理巧が考え始めた。

「その配給寄越せッッ!!」

え?

「バンッ!」

……ビックリした。

突然変な人が来たと思ったら、転ばせて配給持ってっちゃった。

「大丈夫かッ!?」

理巧がそう言って手を差し出してくれた。

「大丈夫だよ。

ありがとう!」

そう言って立ち上がると理巧は怒り始めた。

「ったく、あいつ人の配給奪うのも最低だけど転ばせるなんて、最悪だな…。」

理巧はそう言った。 

「仕方無いよ。

みんな生きていくのに必死だからさ、何をしてでも生きようとしてるから。

それに、女の人を狙った方が取れる可能性が高いでしょう?」

そう返すと理巧はもっと怒り始めた。

「だからって、女を狙うとか…。

男としてどうなんだよ。」

何で理巧はこんなに怒ってるんだろう?













そんなことを思っている間に、私の家についた。

私の上はアパートの2階。

「家に着いたよ。

本当にありがとう!」

名残惜しいけど、ここでさよならなのかな?

ここで別れたら次はまた会えるのかな?

「あぁ、ここか…。」

あれ?

理巧も名残惜しそう…。

何でだろう?

「……もし良かったら家に寄っていく?」

気付けば誘っていた。

ダメだよね。

私はもう理巧の彼女じゃないんだよ。

理巧にもきっと私なんかより可愛くて、優しくて、気遣いが出来る彼女がいる。

私、女々しいよね…。

「寄ってく。

美雨の部屋何階?」

え…。

良いの?

私バカだから、期待しちゃうよ?

「2階だよ!!

こっち!!」

無意識に理巧の手を引いてた。















部屋に入ると、今更だけど緊張してきた。

「あ、好きなところに座ってて!!

配給されたものにろうそく入ってたからつけてくるから!!」

そう言って私は台所に行った。

ろうそくに火をつけ、持っていくと理巧は昔一緒に撮った写真を眺めていた。

付き合ってた頃の写真。

「……………まだ、持ってたんだな」

理巧はそう言った。

持ってるよ。

だって写真に映ってる理巧の笑顔が忘れられないの。

一番好きな笑顔。

「うん。

私の宝物なの!」

そう行って言って笑うと理巧は辛そうな顔をした。

……そんな顔しないで?

お願い。

そんな顔が見たいんじゃないの。













ねぇ、理巧?
























笑ってよ。
























…………美雨に会いたい。

暇があればそんなことを何度も望んだ。

でも、俺はあの時美雨を捨てた。

そんな資格なんてない。

美雨と別れてから何人の女と付き合った。

でも、美雨を忘れることが出来なかった。

美雨と別れなきゃ良かった。

美雨を、傷つけなければ良かった。

女々しいな…。

美雨はきっと今頃他に男がいるだろうな。

あんなに可愛いし、性格も良い。

気遣いも出来るし、料理も上手い。

何もかも完璧な女だからモテるのも当たり前。

美雨への後悔を感じながら配給に行った。

そこにはとても綺麗な女がいて、よく見たら俺の会いたい人で思わず俺は、

「美雨?」

と聞いていた。























数時間後に美雨の家に行くことになった。

美雨に男がいる気配はない。

………美雨は今、付き合ってるやつは居ないのか?

そうだとしたら、また隣に入れるんじゃないかと思ってしまう俺は最低な男。 

美雨がロウソクに火をつけるから座って待っていてと言われた。

テーブルの上には美雨と俺が笑っている写真。

………付き合っていた頃の幸せそうな写真。

でも美雨をその後捨てた。

……………最低だな、俺は。

こんな可愛くて愛しているやつを捨ててからこの気持ちに気づくなんて。

















美雨、ごめんな。



























心からお前を愛してる。




























あの後理巧は自分の家に帰った。

「………はぁ、酷いことしちゃったな。」

気づけばこんなことを口に出す。

でも、理巧。

とってもかっこ良かったな。

昔からかっこいいからな。

それなりにモテるしね。

理巧は今何処に住んでるんだろうな。

会いたいな、会ってまた理巧に抱きつきたい。

あの時理巧は、

「止めろよ、外だぞ。」

そんなことを言ってても笑っていたな。

………………暇だな。

明後日、外に行こうかな。

そう考えるとウキウキした。

楽しみだな。

何しようかな?

お金は少しあるけど、商品は無いからな。

そうだ。

探検しよう。

逆に、それしかないしね。


















明日も、明後日もずっとウイルスに感染しませんように。




























――数日後――――――

探検にいこうと思って、今日は白と水色の空模様のTシャツに黒のジーパンを合わせみた。

よし。

靴はどこ歩いても大丈夫なようにスニーカーにした。

「行ってきまーす!!」

……………そんなこと言っても返事は来ない。

家族皆は隔離された場所にいるしな。

元気かな?

大丈夫かな?

ちゃんと生きてるかな?

そんな心配ばかりで気持ちは下がっていく。

「だめッだめッ!!

こんなこと思っても悲しくなるだけ!!

きっと大丈夫!

皆はきっと生きてる!」

そう自分に言い聞かせ、外を出た。

外の道はデコボコ。

そうだよね。

工事も何もしてないから。

それどころじゃないしね。

そんなことを思いながら街を歩く私。

………街は結構悲惨。

家が潰れて服がそれしかないと思う人の服はボロボロ。

路地裏はご飯を食べられなかった人の餓死をした遺体。

初めて見た人はきっと吐いちゃうと思う。

でもね、こんなこと思ってるけどただの只の綺麗事。

だってそうなる前から紛争や、内戦が起こってた国はこんなの日常茶飯事だったんだから。

こうなるとは思ってなかった人間ばっかりだろうな。

ビルには伸びた弦がある。

東京タワーは赤い色が特徴的なのに赤い色は剥がれ落ちた。

スカイツリーは634mも高さがあったのにメンテナンスも何もしてないからボロボロ。

道にもあちこちにコンクリートから草が生えた。

………こんなの東京じゃない。

そう思う人は沢山いると思うよ?

でもね、これが現実なの。

人が多い分、ウイルスの感染率も高まる。

家が壊れたことによって路頭に迷う人もいる。

それでも現実を見たくない人は自殺する。

恋人、友達、家族……。

大切な人が消えていく。

そんなの当たり前。

孤独が悲しくて苦しくて自殺する。

この世界はもうすぐ終わる。





そんなことを思いながら街を歩く。

変わり果てた東京。

東京が、こんなんだから田舎とかそっちの方は大丈夫かな?

でも、私がそう思っても何も変わらない。

権利も無いしね。

とりあえず前を向いてゆっくり歩いていこう。

















え?

なんで?

そんな……。

嫌だよ!!!












私がそう言ったのはね、理巧がとっても綺麗な人とキスをしてたから。