「でも、今は元気そうで安心したわ」


そう言って笑う母さんに心から感謝の気持ちが溢れた。


俺のことをこんなに大切に思ってくれていた。見ていないと思っていても気づいていたんだ。



「母さん、ありがとう。行ってきます」


「行ってらっしゃい」


自分の心のままに言うと、優しそうな声と微笑みが返ってきた。


「行ってらっしゃーい!」と杏の元気な声も聞こえてきて、俺は新しい道のりへ歩き出した。



◇◆◇




桜が舞う登校中の道。1年前も2年前もこの道で立ち止まっていたよね。


でも、今日が1番晴れやかな気持ちで見られている気がする。



「桜ってやっぱり綺麗だよね」


だって、隣にはそう言って笑いかけてくれる星那がいるから。



どんなに辛いことがあっても、必死に笑って生きている人がいる。


大切な人を幸せにしようと、気持ちを押し殺している人がいる。


どんなに泣きたくても、本音を見せずに強がる人がいる。


俺はそんな人を支えられたかな。そんな人の─────星那の力になれたかな。

「星那と見られて良かった!」


また星那とこの桜の木を見られるなんて思わなかった。


初めて出会ったのもこの桜の木。別れてから気持ちを再確認したのもこの桜の木。


そして今誰よりも愛しい星那が隣にいる。



「私もだよ」


そう言って彼女はまたフワリと微笑む。


────あぁ、好きだな。そんな気持ちが広がる。




何もわかっていなかったかもしれない。力になんてなれなかったかもしれないけど。


星那に恋をして全力だった日々。誰かのために走り続けた毎日。俺はきっと忘れないだろう。


そして、それはこれからもずっと続いていく。



俺達なら “ 大丈夫 ” だよ。不確かで信用なんてできない言葉かもしれないけど、俺のこの気持ちは嘘じゃない。

「ごめんね」


幸せにできなくて。


ずっとそばにいられなくてごめんね。



「ありがとう」


君がいたから頑張れる。


君のおかげで世界は変わったんだ。



「泣かないで」


ときには泣いて立ち止まってもいい。


でもひとりで泣いたりしないで、泣きたいときは呼んでよ。



────ねぇ、星那。


「笑っていて」



辛くても苦しくても、君と過ごした日々はかけがえのないものだった。


全部全部、大切だった。


だからもう安心して?


「大丈夫だよ」

君はひとりじゃないよ。もう離さない。絶対に離れたくない。


いつだって、どこにいたって、星那を助けに行くよ。


だってこんなにも君のことが好きなんだ。


「星那、好きだよ」


「私も大好きだよ」



心地いい風の中、目を閉じる。


次々によみがえってくる懐かしくも切ない大切な日々。


永遠に消えることのない桜色の思い出。



夢みたいな恋だったけど、これは俺と星那の本当の物語。


お互いを想い合った幸せな恋の形。


確かにこの恋の形は歪だったかもしれない。それでも俺達は、懸命に恋をした。



今も浮かぶのは、星那の寂しそうで、でも嬉しそうに笑う顔と。


綺麗に、でも消えそうなくらいに儚い涙だった。



「好き」


ただそれだけの気持ちだった。


でも、この気持ちさえあれば、きっと苦しかった日々も思い出になるときがくる。


ふたりでいれば笑い合えるときがくる。



だから、一緒に新しい明日へ。


俺達を待っている希望を信じて。




Fin.





みなさん、こんにちは!


ちこ♪です。


私にとって3作品目となる『桜色の涙』がやっと完結しました!


ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます♡



この話は、私の中学校に入ってからの実体験をもとにしました。といっても、出会い方などはかなり異なります。


初の男子目線に挑戦してみたのですが、どうだったでしょうか?


主人公の迅は、言葉づかいも性格も男子らしくない部分が多かったかもしれません。あたたかい目で見守ってくださると助かります。



また、美紀と理々愛がどちらも自分の気持ちに正直で友達思いな少し気が強い女子という設定になってしまいました。


よろしければ違いを見つけてあげてください(笑)

作中には「好きな人には笑っていてほしい」「幸せになってほしい」という、人を思いやる気持ちがたくさん出てきます。


その気持ちが大きいあまりすれ違ってしまうことが多かったのですが、それもきっと幸せになるために必要な道だと私は思います。



登場人物は全員優しさで溢れています。また、全員が片想いしています。


渚と美紀は早い段階(?)で結ばれましたが、それ以外の人は苦しい思いをしていました。


でも、好きになる気持ちは誰にも止められないのです。


その気持ちに気づいたときにとる行動は人それぞれだと思いますが「後悔しないように生きたい」と思いながらこの作品を書き上げました。



今まで完結させた作品は全て切ない両片想いの話なので、次は甘い話も書いてみようと思います。


未完結作品も更新していこうと思うので、よろしくお願いします!



本日は春分の日。暦の上ではもう春になりましたね。


みなさんが桜の季節を楽しく過ごせますように。




ちこ♪




高校1年生になった広瀬迅は、桜の木の下で篠原星那に出会う。

迅は星那を好きになるが、星那には彼氏がいた。

ある日、友達の園田渚と橋本美紀、星那の4人で夏祭りに出かけることになった。

そこで星那の彼氏である江崎悠大の浮気現場を目撃。

悠大と別れ悲しんでいた星那に告白する。

気持ちは繋がっていないが恋人になったふたり。

しかし2年生に進級する前、星那に別れを告げられる。

それでも諦められず星那に気持ちを伝え続ける。


そんなとき、2年生になって仲良くなった小谷千佳に告白される。

保留にするも星那と悠大が再び親しくしている姿を見て、千佳と付き合う決断をした。

しかし、友達の矢代理々愛にも忠告されたのに星那を忘れられない─────。


片想いと希望をテーマとした切ない作品になっています。

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