「与那ちゃん、すぐにお引越しなの?」

母さんがポカンとした顔で歩琉に尋ねた。

「いや、1ヵ月後だって言ってた。」

俺はずっと下を向いている。

「そっか。じゃあ、3月中頃にもう行っちゃ

うのね。小さい頃からまるで双子ちゃんみた

いで可愛くて、2人が一緒にいると、周りの人

はいつも可愛いねって言ってくれたわ。

まだまだずっと幼なじみだと思っていたけれ

どちょっと残念ね。」


母さんがずっと話している間も俺は上の空だ

った。

(6年生になったら、次こそは自分から夏祭

りに誘おうって思ってたのになぁ...)

いつもいつも今年こそはと思っていても、

結局与那から先に「今年もまた一緒に花火

見に行こ。」 と言われ、それに頷く形になっ

ていた。

だから、最後の6年生、今年はなにがなん

でも誘うと決めていたのに。その誘いたい相

手は1ヵ月後にはもうここにはいない。

そんな事実に、俺は思ったよりも落胆して

いたのだった。

そんな俺を見かけて、母さんがこんな提案

をした。


「歩琉、最後の思い出として、一緒に花祭

りに行ったら?そして、その時に何かプレゼ

ントしてあげればいいじゃない!」

なぜだか、そんな提案をした母さんの方が

ウキウキした顔をしている。

(プレゼントかぁ...)

何をあげればいいのかな....

何年も一緒だったのに、全く与那の好きそ

うな物の検討がつかなかった。

(まぁとりあえず誘ってみっか!)

まぁ、俺は気を取り直し、与那を誘ってみ

ることにした。