「それにしてもイケメンだわ」


「そうだねぇ」


本日2回目。
奈々の呟きに私は薄い返事を返す。


「何その反応!言っとくけど、あれ以上のレベルなんてそうそう居ないわよ?」


分かってる。分かってるよそんなこと。
あいつがイケメンだなんて、重々承知してる。


「分かってねぇな、ああいう奴は顔だけだから!中身伴ってないから…ってなんだよその目は!やめろ!俺を哀れむな!」


悔しそうに騒ぐ拓海に、私と奈々は哀れみの視線を向ける。


拓海も確かにイケメンだけど、瀬川は格が違うのだ。張り合っても辛いだけ。


「あんたもまぁその性格さえどうにかすれば…
うん、元気出して」


拓海の肩をポンポンと叩くと思いっきり振り払われた。ひどい、慰めようとしただけなのに。


「きっと、いいことあるよ…!」


「だからその哀れみの目を俺に向けるな!!」


騒ぐ拓海の様子がおかしくて、奈々と目を合わせて笑う。つい1分前まで、世界の終わりだと考えていたことが嘘のようだ。


奈々と拓海と話していると本当に落ち着く。


好きだ、この2人が好きだ。
いい奴ばかりのクラスメートも好きだ。
担任も、教科担任も、この教室も。
好きだ、好きだ、大好きだ。