「ん、そういえば。見たわよ写真」
写真撮影の次の日、奈々がふいにそう言った。
「…それは、ドーモ」
私の抵抗も虚しく、クラスラインには昨日撮った写真がアップされた。(私の肖像権とプライバシーはどこにいった?)
もうその反応といったらとても熱烈で、朝から私はクラスメイトに囲まれスター状態だった。
「遥やっぱり可愛かった」
「へいへいどーも、朝からみーんなそう言ってくれますよ。
いいんだよ別に、イケメンの隣に私みたいなのが並んでて見苦しいからって慰めてくれなくても」
「うわぁ、やさぐれてる」
「うるさい、そのお世辞はもう言われ飽きた。
っていうかイケメンの隣に並ばなきゃいけないこっちの身にもなってよね」
少しイラつきながら、卵焼きを口に運ぶ。
奈々は呆れたようにこちらを見た。
「あんたってほんと、自分のことになると鈍いっつーか、無自覚っつーか。
めんどくさいわね」
「めんどくさいってなによ!」
「はいはい、ごめんって。
超絶似合ってたわよ、あんたと瀬川くん」
「………………」
「それにしても残念だわ。
あの衣装気に入ってたのに」
「え、なんで。あの衣装ダメなの?」
まぁ露出多いから私的にはありがたいけど。
「猛抗議が入っちゃってね」
「猛抗議?」
「そう、誰からだと思う?」
「え…、先生から、とか?」
「残念、瀬川くんからよ」
「………はい?」
「もうあの後大変だったんだから!
瀬川くんが、遥があの衣装着るんなら俺は劇に出ない!って言い張っちゃって。
その熱意に負けたわ。
しかもその後悪かったって言って最新のミシンプレゼントしてくれたのよ」
あんぐりと開けた口が塞がらない。
「遥、愛されてるねぇ」
ニコリ、と奈々は本当に嬉しそうに笑う。
「それのどこがどう愛されてんのよ。
私があの衣装着ると見苦しいからでしょ?」
「何言ってんのあんた。
昨日の衣装着た姿を他の男に見られたくないからに決まってるじゃない」
…なんだそれ。そんな訳、ないじゃないか。
否定の言葉は、口から出ようとしない。
「羨ましいわ」
そう言う奈々の目は完全な恋する女の子の目だった。
「中谷奈々、居る?」
教室のドアから生徒会長が奈々を呼んだ。
(もう一度言うが奈々は副会長だ)
「…………っち」
奈々は忌々しそうに舌打ちをして立ち上がった。
だけど私は知っている。
奈々が生徒会長に想いを寄せていることを。
それにきっと生徒会長もーーーー。
ねぇ、奈々。羨ましいって言ったけど、私もあなたが羨ましい。
生徒会長は確かに女好きだけれど、奈々は特別だということがひしひしと伝わってくる。