「それで、なんであんたは世界の終わりみたいな顔してるわけ」


朝礼が終わると、奈々が私と拓海の元にやってきた。(拓海と私は隣同士である。忌々しいことに)


「私は神に見放されたの…」


「行事にかこつけてバカみたいに食いまくるから見放されるんだよ」


「黙れ拓海」


「ちょっと、私はあんた達の夫婦喧嘩見るためにわざわざ移動してきた訳じゃないの、やめてくれる」


奈々からの冷たい目線に、拓海と私は口を噤んだ。奈々ちゃんごめんって、でもその目はやめようよ、本当に凍りそう。


「じゃあなんでわざわざ来たんだよ」


私達の席は教室の左端、窓側の後ろの方だが、奈々の席は廊下側の1番前、つまり正反対だ。
私と話したいって訳でもなさそうだし、奈々がわざわざここまで来る理由はない。


「なんでって。瀬川くんが見やすいからよ」


当たり前でしょう、と奈々の顔が語っている。
いいけど、いいけどさ別に。


「はぁ…本当にかっこいいわ…」


癖のある黒髪、すっと通った鼻、形のいい唇に180センチを超える抜群のスタイル。


そして、私の苦手な、何でもお見通しだと言わんばかりの漆黒の瞳。


彼は確かに、イケメンの部類に入る。


いや、イケメンの中でもトップクラス。
奈々でさえかっこいいと認めるのだから、そこら辺の男とは格が違う。


それにきっと成績優秀、運動神経抜群のはず。


昔から、彼はチートキャラだったのだから。


そう、昔から。