「「また!?」」
私達の会話を遮ったのは、教壇に飛び乗って声を張るクラスメイトの声だった。
瀬川が転校してきてから1週間と少し。
ここまで早いピッチで転校してくるのは異様だ。
「1ヶ月後登校だって!今度は女の子!
本当は瀬川と同じタイミングだったんだけど、
なんやかんやで遅れたらしい!」
そう大声で話す彼は新聞部。情報収集能力はピカイチだ。(もし彼がドアに耳をつけていたら、そこには何か必ず面白いことがあると思っていい)
1ヶ月後の情報をどうやって仕入れたのかは知らないけど、きっと書類を盗撮したか盗み聞きしたかのどちらかだろう。
「へぇ…女の子か」
そう呟く奈々は、全く興味がなさそうだ。
女子にはときめかないらしい。
「可愛い子だといいなぁ。ついでにお姫様役代わってくれるといいなぁ」
「諦めなさい。瀬川くんとラブラブのキスシーンを演じることね」
「嫌なこと言うな!」
「遥」
奈々の表情がさっと変わった。
「気をつけなさい。
瀬川には熱狂的なファンが出来始めてる。
瀬川の相手役じゃ何をされてもおかしくない。
あんたには私と柳田がいるけど、常に守れる訳じゃない」
心配なのよあんたが。と言外に言っている。
普段は冷たいし扱いもひどいというのに、拓海も奈々も、いざという時はありえないほど優しいし私のことを甘やかす。
「大丈夫だよ、私そこまで弱くない」
だから大丈夫、と笑顔で返したのに、奈々はクスリとも笑わなかった。
「人の悪意は、想像以上に醜いの。
あんたには、出来るだけ触れて欲しくない」
「過保護だなぁ」
今度は笑えなかった。
ああ。
私、あんたに出会えて本当に幸せだわ。