「主役は瀬川くんと一ノ瀬さんに決定です!」
委員長が高々と宣言し、他の配役決めに移っていく。
女子は落胆する様子も見せず、王子様に近い役を奪い合っていた。
なにこの恋愛小説みたいな展開。(小説だけど)
ついていけないんですけど、作者どうにかしろ。(ごめん無理。っていうか口調荒れてるよ)
うるせー、誰のせいだと思ってんだよ作者。(だからごめんってば)
絶対に嫌だ。
瀬川と恋人同士の役柄とか無理。
「いいなぁ、遥」
私の斜め前の席、彩音がこちらを振り向いた。
これは絶好のチャンスだ、と彩音に笑顔を向ける。
「彩音、交代する?」
「えっほんとに!?いいの!?」
もちろん、と言いかけたところで松岡先生が首を挟んできた。
「ダメだ。
平等に決めたんだ、今更交代は許さない」
まっちゃんの声色は全く譲らないときのそれで、私は諦めて席に着いた。
なんというか、絶望、って感じ?
ああもうコレ、呼び出し確定だわ。
校舎の裏でボコられるの決定だわ、ヌンチャクでも持ってくる?(思考も荒くなってきたぞー)
1つ救いがあるとすれば、『白雪姫』の作中で王子様との絡みが少ないということだ。
確か私の記憶の中では、最初に少しと最後のキスシ…、キスシーン!?
いやまさかね、高校生の劇でキスシーンを入れるわけが、ないよ、ねぇ?
「脚本俺、監督俺だ。主役の2人は頑張れよ。
キスシーンもばっちり入れるからな」
先生の非情な宣告に、私はがっくりと首を垂れた。
(大体素人の高校生にキスシーンって!
ハードル高すぎませんかね!)