「ねぇ」
「なっ、」
瀬川の大きな手が私の頭を撫で、髪を梳く。
あまりに心地よくて、抵抗もせずその手を受け入れていた。
「俺のこと、少しは好きになった?」
「……は?」
「まだ、俺のこと嫌い?」
「…嫌い、だよ?」
瀬川のことが好きか、と言われればそれはないと言い切れる。未だに「あのこと」はトラウマだし、実際再会して1週間経った今も、私は全く心を開いていない。
そして、きっと瀬川も、5年前のことを忘れているわけではない。
「そっかぁ。まぁいいや」
瀬川は私の頭を撫でる手を止め、私の耳元に顔を近づけて囁いた。
「もう一度言うけど。俺のこと、好きで好きでたまらなく好きにさせるから、そのつもりで居て」