「朝か…」
本当に目覚めたらしい瀬川が呟く。
耳にかかる微かな吐息や、なんとなく感じる視線から逃げようと、壁の方へ寝返りを打つ。
すると、腰に回っている手に力が入り、くるりと瀬川の方を向かされた。
「ねぇ、遥」
耳元で瀬川が呟く。寝起きだからか声が少し掠れていて、色気が半端ではない。
ゾクリ、と悪寒に近い何かが背中を這う。
「好きだよ」
好き?瀬川が、私のことを?
そんなのあり得ない。
顔に集まっていた熱が、すーっと引いていくのを感じた。
だって瀬川は、私のことをいじめていた、張本人なんだから。