ーーーー「何してんだてめぇ!!!」
いきなり私の前に立ちはだかった人影。
それは紛れもなく、瀬川だった。
瀬川は思いっきり男を殴り、男は殴られた方向へ飛んでしまった。
そして、ひぃ、と情けない悲鳴をあげて走り去っていく。
「あ…」
あまりの早技に呆気にとられていると、強く腕を引っ張られ、私はポスン、と瀬川の胸の中に収まった。
「遅くなるなら連絡くらい入れろバカ!
どんだけっ、心配したとっ!!」
文句は言えなかった。
その声には心配が滲み出ていたから。
それに、たまたまこんなところ通るはずない。きっと、迎えに来てくれたのだろう。
「ごめん…」
「何された」
瀬川は険しい顔をしていて、私は肩を竦めた。
「胸と太ももを…」
「……怒ってごめん、恐かったよな?」
「…うん」
私を抱き締める腕の力が強くなる。
力強くて、でも優しい瀬川の腕の中、私はただ呆然と抱きしめられていた。