瀬川が転校してきて1週間が経った。
「…大嫌いだ」
外見の良さ、誰にでも優しい性格、クールな見た目からは想像できない甘い笑顔。
ギャップ萌えまで取り揃えた彼は、
まさに「完璧」。
そんな彼は、瞬く間に学校の人気者、否、王子様になった。
(非現実だと言われても女子の間では実際に王子と呼ばれているのだから仕方ない)
まだ1週間しか経っていないのに告白は絶えないし、靴箱、ロッカー、机、あらゆるところにプレゼントが山盛りに置いてある。
ただ、彼の周りに女子が集まることは無くなった。
え?人気が落ちたのかって?
いやいやまさか。
あいつは相変わらず皆に笑顔を振りまいていて王子様っぷりが板についているし、現にファンクラブの会員数は爆発的に増えているらしい。
「瀬川くんは、どんな子がタイプなの?」
どこにでもある、普通の質問。
でもこれが地雷だった。
瀬川は少し考え込んだ後、
(女子が伏し目がちな目もサイコーと騒いでいた。イケメンは何しても許されるってやつですねハイハイソーデスカ)
「引っ込み思案で、大人しめな子かな」
と答えたのだった。(絶対策略だろ!)
その日から、瀬川への猛烈アピールはパタリと止み、瀬川は快適なスクールライフを送っているようだ。
「蒼、次移動だから行こうぜ!」
私の大事な親友を、一人奪って。