私のクラスメイトには、穏やかな子が多い。
そんな中で、私はとても充実した毎日を過ごしていた。
いじめも無く、ケンカもなく、みんなでふざけながら、幸せな日々を送っていたのだ。
親友の奈々と拓海が居て、大好きなクラスメートが居て。
そして私は、「ムードメーカー」という立場を手に入れていた。
明るくて、サバサバしてて、男っぽい。
これが、私の「イメージ」だ。
引っ込み思案にならないように積極的に物事に取り組み、常に笑顔を振りまき、冗談を言ってはみんなを笑わせ、見た目にも気を配り。
様々なことを心がけているが、特に気をつけていることがある。
それは「男」っぽく振る舞う、ということ。
男子と仲良くしていると、どうしても女子からやっかみを買う。けれどクラスで中心的な立場に居るには、男子の支持は不可欠だ。
だから私は、ガサツに男っぽく振る舞うことで男女の友達を手に入れていた。
男子に女の子扱いされることはないから、女子からのやっかみを買うこともない。
私が男子に囲まれて話していたとしても(そんなむさ苦しい状況ごめんだけど)、イケメンの拓海と仲良くても(あいつの私の扱いは余りにもひどいけど)、何も言われないのだ。
取り繕っていると言われてしまえばその通りだが、私は少し違うと思っている。
「変わった」のだ、私は。
自分の「素」なんて知らない。
私は選んでなりたい私になった。
クラスの人気者で、明るくて、友達が多い、そんな「一ノ瀬遥」になったのだ。
昔の私は、捨てたのだ。