「綺麗」
新学期を迎えて、3日。
満開を少し過ぎた桜の花びらが、風に乗ってひらひらと舞っている。
私の通う学校は「桜道学園」
その名の通り、桜が綺麗なことで有名な学校だ。
駅から学校までの通学路、それと校庭には所狭しと桜が植えられ、春になると一斉に花を咲かせる。
満開の桜は綺麗だけれど、私は散っていく桜の方が好きだ。
儚くて、寂しくて。とても、美しい。
「それにしても、ほんとに綺麗だ…」
ゆっくりと、学校までの道のりを歩く。
思いっきり息を吸い込めば、すこししっとりとした空気が肺を満たす。
私は、退屈だけれど穏やかな幸せに包まれていた。
それ以上のものなど、何も望んでいなかった。
ーーーはずなのに。