飛行機の中だのうんぬんかんぬんはガン無視して、メッセージアプリを開く。
確か飛行機も有料だがWI-FIが飛んでいるはずだ。絶対に連絡つく、と私は確信していた。
『瀬川蒼が家に居るんだけど、どういうこと』
『あらぁ、言ってなかったっけ。
その子、私のお得意様の息子さんなの。
両親は海外に居て息子さんも海外に住んでたんだけど、息子さんは日本に住みたいって言っててね。
私もあなたが心配だったし、一緒に住んでもらおうと思って。どうせ部屋は余ってるんだし』
まるでその答えを用意していたかのように、すぐに返信が来た。
…ウソでしょお母さん。
お願いだから冗談よ、って言って。
『だからって男と一緒に住ませるかフツー。
むしろそっちの方が危ないでしょ』
『イケメンになら襲われてもいいでしょ?』
「はぁ!?」
お母さんには聞こえないと知っていて、私は抗議の声を上げた。
開いた口が塞がらないとはこういうことだ。
お母さん、仮にもあなたの娘が好きでもない男にハジメテを奪われてもいいんですか。
大体私は純ジャパニーズで、大切なハジメテは好きな人と…なんて超保守的な貞操観念の持ち主である。
海外を飛び回ってるわけでも海外に住んでた訳でもないのだから、いきなりワールドレベルの基準を持ち出されても困るのだ。
大体お母さんは海外に染まりすぎなのよ、っていうか海外でもいきなり一緒に住むとかないでしょ、
…じゃなくて!今は海外に居るお母さんに文句を言うよりも、瀬川を追い出す方が先だ。
だって無理。一緒に住むとか無理、出来ない。