「起きて」
いい夢を見ていた。
父が笑っていた。母も笑っていた。
私も、笑っていた。
「遥、起きて」
知らない声がする。
もう少し、もう少しだけ…
「遥、遥起きて!ねぇ!」
「もうなにっ!?今いい夢見てたのに…!」
あれ、これもまだ、夢?
いやだな、変な夢だ。
私の家に瀬川が居るなんて。
とりあえずもう一度寝よう。今度こそあの幸せな夢を…
「ちょ、遥!寝ないで!起きて!」
「……は?
何でアンタが、ここに居るの?」
「お母さんに聞いてない?
俺、今日からここに住むんだよ」
……ああ、夢か。本当にイヤな夢だ。
「えっ、ちょっと遥!寝ないでってば!」
背中に触れる手の感触がとてもリアルだ。
本当に変な感じ。
「変な夢だ…」
「…夢じゃない。現実だよ」
ふわふわしていた意識が段々と覚醒していく。
目の前にやけに整った顔の男ーー瀬川が跪いていた。