その日は、午前中で授業が終わりだった。
午後は新入生に対する説明会が行われるのだ。
生徒会の奈々は説明会に駆り出され、会の中で教職員の紹介があるので全部活休み。
普段部活が忙しい拓海と肩を並べて帰り道を歩いた。
そこまでは楽しかった。相変わらず拓海とはケンカばかりだったけど。
違和感を感じたのはリビングの端にダンボールが高く積み上げられているのを見つけたときである。
母のお土産にしては随分と多いし、それに差出人には「瀬川貴子」とある。そんな人、私は知らない。
…苗字には覚えありまくりだけど。
1番の原因として考えられる母は今日の朝からニューヨークへ出張のはずだ。
確か、期間は2ヶ月。
まぁいい。母がニューヨークへ着いた頃合いを見計らって電話しよう。ついでにお土産を忘れないよう念押ししなきゃ。
あの人はお土産のセンス抜群のくせに、買い忘れることがままあるからな。
「選ぶのも大変なのよ」
と母は言うが、娘に寂しい思いをさせてる分、それくらいしてくれてもいいと思う。
そもそも家のことは全部私がやってるわけだし、安いもんでしょお土産くらい。
ああ、なんだか無性に寂しくなってきた。
母が日本に居たのはほんの1週間ほどだった。
早く電話したい。確か10時の便に乗ると言っていたから、着くのは夜中かな。
賑やかしにテレビをつけ、ふかふかのソファに寝転がる。
母がくれた羊の抱き枕を抱くのは、私の寂しい気持ちを解消させる唯一の方法だった。