私は瀬名先輩の名前を覚えているけど、瀬名先輩は私の名前なんて、もう忘れてるだろうな。


「今度、神奈川の湊高校でサッカーの試合があるんだ。俺も出るから、見においでよ」


「いいんですか」


「もちろん。いつも応援してくれてるでしょ。教室のベランダから」


「き、気づいてたんですか!」


「気づいてた」


多分、きっと、いや、確実に今、私の顔は真っ赤になっている。

『もうこうなったら告白しちゃえば』と恋の天使が度胸のない私の耳元で囁いている。

うぅ、もう、えいっ。


「あの、瀬名先輩、私、ずっと先輩のことが」


「待って」


瀬名先輩は細くて長い人差し指を私の唇にあてた。