本当、優しすぎる…。


「ありがとう、壱夜くん!」


笑顔を浮かべながら声を弾ませる。


“今度は、はぐれないように気をつけろ”とか“いちいち、礼なんか要らない”みたいな素っ気ない言葉が返ってきそうだな…。


「……………」


私をチラリと見た後、壱夜くんは前方へと視線を戻して黙々と歩いて行く。


もしや、無言スルー?


私の声、ボリュームが大きめだったから、引いちゃったのかな…?


「あ、あの……大きな声を出しちゃってごめんね。もう少し抑えた方が良かっ……」


「なあ、碧瀬」


壱夜くんが言葉を遮る。


声の雰囲気からすると、怒ってはいないみたいだ。


「お前ってさ……」


立ち止まった壱夜くんが何かを話し始めようとしたところで、桃舞くんたちがやって来た。


「莉彩ちゃん、俺ら…自分のペースでさっさと先に行っちゃってゴメンね」


「ううん、気にしないで?」


「気付いたら莉彩ちゃんが近くに居ないから焦ったよ。そしたら壱夜のヤツ……んっ!?」


いきなり、桃舞くんの口を手で塞ぐ壱夜くん。


睨みつけている眼光が鋭くて、かなり恐い。