「ユキエ、災難だったね」

ユキエが意識を取り戻すと、病室のベッドの上だった。

いつの間にか、ルリがいる。

そして、その横には洋介が立っていた。

「事務所のマネージャーから、電話があって駆けつけたのよ」

「あ、そう。でも、私、なんで病院にいるのかな」

「ユキエ、覚えていないの? 撮影中に事故があってさ」

ユキエは少しづつ、思いだしてきた。

そういえば、あの人は・・・・


「ルリ、あの若い役者さんは?」

ユキエが聞くと、ルリは顔を曇らせた。


洋介がユキエのそばにきて、言った。

「しっかりしてくれよな。あの人は残念ながら、亡くなったよ」


ユキエは、その言葉であの事故の瞬間が再び頭をよぎった。


「あの時、何もできなかった。私の足を掴んで、痛いよって言ったのに」


ユキエはあの時掴まれた足の感覚を思い出した。

まるで今も掴まれているような・・・


「それから、、、」

洋介が言いにくそうに話を続けた。



「その時掴んだ彼の右手、まだ付いたままなんだ、君の足に・・・」