「ごめん、ユキエ。助けて、お願い」

ルリからの電話は、バイトを代わってくれということだった。

「エキストラって、安いんでしょ」

そう答えたけれど、ルリには借りがあったので、ユキエは断れなかった。


ロケ弁が出るというのも、引き受ける理由の一つだった。


それにロケの場所が近かった。

自転車で行けば、交通費も浮くし。



いいな、ルリのやつ。

洋介とデートか。



ホントは少し洋介が好きだったから、ちょっと悔しい。


そんなことを思いながら、撮影場所である公園についた。

エキストラは全部で五人。


ルリが事務所に連絡してあるから、大丈夫って言っていた。

マネージャーらしき人が点呼を取っている。


「すみません、山川ルリの代わりにきた北条ユキエですけれど」

「はい、山川さんから聞いてますよ。結構待ち時間があるから、適当にね」


スタッフが撮影の準備で走り回っている。


二時間ドラマの回想シーンとルリは言っていたっけ。

公園のベンチに座っていれば良いだけ。


撮影が始まった。

主人公の若い役者が、公園の中をランニングしている。

そこにヒロインの女の子が犬の散歩でやってくる。

そんなシーンらしい。


ユキエは、指示されたベンチに座って渡された本を読んでいた。


無事に午前中の撮影が終わり、遅い昼飯が配られた。

1000円程度のロケ弁とお茶だ。


ユキエは他のエキストラの人たちと一緒に食べ始めた。


と、携帯電話が鳴った。