「好きです!!」

「ごめん、俺好きな人いるから」

全ては愛梨がこの告白を聞いたことから始まった。

今まで幼馴染でイケメン系の黒川鷹人や可愛い系の谷本春馬が告白される場面は何度も見て来た愛梨だが、鷹人のこの言葉は初めて聞いた。


『俺、好きな人いるから』


鷹人が好きな人を作るとは…と愛梨はニヤリとした。

「ハルと姐さんに手伝ってもらって鷹人を葬ってやろーっと」

愛梨は再びニヤリと笑うと、鷹人と女子生徒の方に目を向けた。


女子生徒は「なんで?」「好きな人って?」と泣きながら鷹人に詰め寄っている。

鷹人は面倒臭そうに女子生徒を見てから、女子を魅了する笑みを浮かべながら

「秘密」

と答えた。

そんなことするからモテるんじゃん
と愛梨は顔をしかめた。


「愛梨」

「うぎゃ!?」

呼ばれた方を見ると鷹人が立っていた。

もう終わったの!?と驚きを隠せない愛梨に鷹人はさっきと同じ笑みを浮かべて


「盗み聞きとはいい度胸だね?」

と愛梨に顔を近づけた。


普通ならときめくところだが、残念ながら愛梨はときめかない。


「うっさいな鷹人。早く部活行けよ」


「さっきの告白で行く気が失せた」


それに、と鷹人は続ける。


「待ってたんじゃないの?」


「え、何自意識過剰なの?」


愛梨はニヤリと笑う鷹人を押し退けて靴を履き替える。

鷹人は愛梨の背中を見て静かに微笑んだ。