没収されたノートにわたしは詩を書いていたわけじゃない。

「剣道ノートだよ」

「剣道ノート?」

「うん、総体が近いから、ちょっと前から書いてるの」

職員室の前はいろんな人が行き交うため、わたし達は少し歩くことにした。

輝空くんは人の右側が好きらしい。だからわたしは左を歩く。少しゆっくりとした歩調で、わたしには歩きやすかった。

「総体かぁ……俺ら、総体ないから暇だなぁ」

野球部は総体ないの!?と驚いて、わたしは一度廊下の途中で立ち止まる。

「あ?ないよー。でもそのかわりに春の選抜があるからな」

わたしが止まると、わたしより一歩前に出てしまった輝空くんは後ろを振り返った。

「え‼いつやるの!?わたし応援行くよ‼」

また輝空くんの試合が見られるんだ‼と、わくわくしながら言うわたしを見て、プッと吹き出す輝空くん。

「いや、もう終わったから」

えっ‼と、残念そうにしているわたしの頭をポンポンとなでる。