「失礼します」
できるだけ静かにドアを閉める。
職員室に入ると、すぐ右側に生徒指導部の教師の机。その反対側には一学年の担当教師の机が並んでいる。
休み時間は、お茶をすする教師やいろんな学年の生徒たちであふれている。
男の子がふたり、おデブな生徒指導の先生に怒られていたのをチラ見しつつ。
わたしは右側の一学年の机よりも少し奥をめざした。
「先生」
のんきにオハギを頬張る生物の先生。わたしの声にあわてて振り向く。
「んっ?」
口元についているあんこの粒が気になり凝視していると、急いでティッシュでふき取る先生。食うか?と、言われたが遠慮しておいた。
「さっきの……」
言いかけたわたしに生物の先生は「ああ」と、冷たい表情で言い返す。
「何かに真剣になるのは結構。でも俺の授業中にだけは絶対するな。次はないからな」
ポイっとわたしにノートを投げる。
オハギ食うか?とまた言われたので、いや、ほんと大丈夫ですからと断った。