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新しいクラスになって数日がたった頃。女子だけなら、クラスのみんなの名前を言えるようになった。

わたしの席は真ん中の列の一番後ろ。
輝空くんが机にうつぶせて寝ている姿もここからはよく見える。その後、先生に叩き起こされ怒られる過程も。

授業が退屈になった時はたまに輝空くんをチラっと目で追う。
自転車を走らせるあの背中に触れたことがある。過去はいつも夢のようで。
今を生きるわたしは、あの時の出来事は全部わたしの見た夢だったんじゃないか、と疑ってしまいそうになる……


「おい、何してんだ」

授業中、考えにふけていたわたしの前に生物教師が仁王立ち。わたしの机から教科書の下に隠していた一冊のノートを取り上げる。

「あっ‼」

そのノートは……
手を伸ばすわたしをかわし、その生物の教師はパラパラとノートをめくる。

「‥‥…。これは没収だ。俺の授業を聞かないなら出ていけ」

このクラスは委員長がこんなじゃダメだな。
その一言に一瞬、イラっとしたがあえて反抗せず静かに授業をうけた。

失態……今の惨めな姿を輝空くんに見られたと思うと元気が半減するようだ。