新しい教室は階段から近い場所にあった。廊下の窓から見える三階の眺めは清々しい。

席、近いといいね。と、ドアに張り出された座席表を指でなぞる。


「邪魔なんですけどー」

背中の方からかけられた声に驚き、サッと振り返った。

「あ、ごめんなさ……」

声の主に謝ろうとした瞬間、パコンッと頭を何かで小突かれた。

「面ありー」

剣道部のくせにすきだらけじゃん。と、笑ったのは輝空くん。
あ然としているわたしは、急に顔が火照ってきた。

「な、何よ……っ‼」

生意気な坊主頭をガシガシしてやろうとしたわたしの手を輝空くんはスルリとかわす。

「あ~ぁ、歩舞と同じクラスかよー」

「っ失礼な‼わたしと一緒なことを幸せだと思……っ」

同じクラス……?

「逆に不幸になりそうだなぁー」

トクンットクンッ……と鳴る鼓動。
ふざけて笑う輝空くんに聞こえてしまいそうだ。
本当に同じクラスなの?