お母さんから無理矢理メモを託されて参戦したスーパーに、藤嶋輝空はいた。
あ然……という言葉の使い道を初めて有効に使えた気がする。バラ肉の品定めを終えて顔をあげた藤嶋輝空と目が合った。

「あ」

藤嶋輝空の第一声はいつも「あ」な気がする

「コンニチワー」

「ッこんにちわ……」

まさか話し掛けてくるなんて想定外で……あせった。

「確か同じ学校だよね?俺何度か見たことあるよ」

「えっ‼わ、わたしは知らないかなぁ……」

わたしはいつも見てるよ‼……なんて言えるわけもなくて、とっさに嘘が出た。

「多村さんと仲いいよね?よくこっちの組来てるじゃん、俺見たことない?この前、野球の試合出てたんだけどなぁ~」

“俺、存在感ないかな”と、そう言って笑った。整った顔立ちが子どものように無邪気な顔に変わる。

「……あ、見たよ。ホームラン打ったでしょ?わたしあれから高校野球が好きになったの」

「マジで!?俺のおかげじゃん」