大きな木に囲まれていつも暗く、壊れたブランコが濡れている。
雨に濡れたくなくて、今日だけはお宮の前を通る事にしたわたしは目線を下にして進む。

ふと顔をあげると、お宮に誰かが座っているのが見えた。ボーズ頭に見覚えのあるエナメルのバック……輝空くんだ。

「……輝空くん‼」

道から声をかけると、輝空くんはハッと我に返ったかのように少し慌てたように見えた。

「歩舞じゃん、……お前部活はぁー?」

サボリかー?と、遠くから笑う輝空くん。

「今日は部活OFFなのぉー。輝空くんはぁー?」

「雨じゃグラウンド使えねぇョー。筋トレするかと思ったら無しになったぁー」

そっちに行っていいー?と聞くと、招き猫のように手で合図をしてくれた輝空くんは、雨の当たらない石段の上に腰掛けていた。

「こんな所で何してたの?」

「ん?考え事かな~」

ふーん、と言って横に座る。

「何考えてたの?」

「秘密」

「なによぉー水臭いなぁ~」