尊の腕を横から揺する寧音に、冗談混じりに尊が呟く。動きを止めてふくれ顔になる寧音。
『ごめんごめん‼嘘だからー』と、尊が言うと寧音の機嫌は戻った。

「それにしても最近ほんと一緒にいること多くなったね。よかったじゃん♪」

わたしが照れながらうん、と答えると寧音はより一層綺麗な笑顔を向けてくれる。
人の幸せを心から喜べる、寧音はそんな子だ。



放課後の空は薄暗く、6時限の途中から振り出した雨が憂欝な気分にさせる。

傘なんて用意していない。諦めて玄関から駆け出した。水溜まりを蹴るたび足は泥だらけ。制服は濡れて、ブレザーの紺色は一層濃くなる。カバンも雨が染みて中身が心配(たいしたモノは入っちゃいないけど)。


コンビニの脇の道へ入り、赤い屋根の家を左に曲がって細道へ。少しすると人気のないお宮が見えて来る。通学路としては近道だけど、いつも通らないのはお宮を一人で通りたくなかったから。