少し肌寒い卒業式の会場。
長い長い、エライ人のお話を聞くのもこれで最後だ。と、辛抱しつつ、パイプ椅子に座っていろんな思い出を振り返って懐かしい気持ちにひたっていた。


三年間、担任だった堀田ちゃんは出席番号順に名前を呼んでいく。

『お前がどうしてもここに行きたいって気持ちが感じられない』

堀田ちゃんの言葉に声が出なくなった受験シーズン。AO入試受験での読書論文がなかなかまとまらなかった。
何も考えられない。受験という単語を聞きたくない。


放課後、もう一度、呼び出されて嫌々行った時。

『こんな所で負けるな‼
お前は出来るって所を見せてやんな』

その言葉がどれだけ心に響いたか。
それこそ声が出なくなった。



「香山 歩舞」

わたしの名を読み上げる堀田ちゃんを見て、堀田ちゃんの生徒だって事をひそかに今、誇りに思っているよ。と、思ってみたりして。