カキ――ン──……
7球目、直球をがむしゃらに……

――――……
―――……
――……

手を離した一瞬……あの夏、いつものお宮で
サヨナラをして──……

輝空は走った。高校生活最後の夏、馬鹿みたいに泣いたのは、輝空の夢はわたしの夢だったから。

あの時、わたしがしたことは無駄じゃかったんだよね?わたしが離した手は今に生きているよね?

この試合が輝いて見えるのは別れが無駄じゃなかったから……
今日だけは、そんな自分勝手な思いでいてもいいですか?


振り抜いた打球は右翼手の頭上を越え空を飛ぶ。一気にその足は三塁へ。
輝空は三塁ベース上で中腰になると厳しい目でバッターボックスを見つめた。
その手が、声が、大きな背中が、眼差しが。

あなたの夢が愛しくて……
ずっと、わたしは目が離せないんだ。