ファール。まだ輝空は諦めていないんだと悟る。

仲間を信じて塁に出よう、まだ追いつける。バットを握り締める姿はそう言い聞かせているように見えて……


今思えばたくさんのものが見えてくる。
わたしと輝空はいつも笑っていて、毎度毎度で喧嘩をする寧音と尊に疑問を感じていた。

輝空が笑ってくれるのならそれでいい。それがわたしの幸せ。輝空もきっと同じ、喧嘩なんてしたくない。

そんな風に思っていたけど……
今思えばもっと……わたしたちはお互いの気持ちを言い合うべきだったのかもしれない。

最初から我慢していれば喧嘩なんてないのに。
そうじゃないんだ。喧嘩なんて誰だってしたくないものだけど、自分の気持ちを相手に言わないと相手の気持ちだって見えてこない。
蓄積された気持ちは行き場をなくして、今のわたしたちが出来上がった。

あぁ、わたしは輝空の気持ちを見ようとしてなかったのかな。


『そうか?別にそんな感じでもいいんじゃねぇ?』

今なら、あの時の委員長の言葉もちゃんと理解できる。

わたしたちも、もっと喧嘩をすればよかったね、輝空。