──……高校二年の10月18日、月曜日。

『お前の誕生日の前の日は二人で遊ぼうな』
そう言ってくれていた輝空は

【約束したくせにやぶるの最低だと思うけど、ごめん】

その日、わたしの前に現れなかった。
部活の後、駐輪場で自転車にまたがって受信されていたそのメールを見て、悲しさ……より先に嬉しさを感じて泣いた。

わたしの誕生日のこと、その約束のことちゃんと覚えてくれていたんだね。それだけでわたしは救われるから……ありがとう。
そう思って泣いたんだ。
苦しくて、嬉しくて、悲しくて。自分が何に泣いているのかわからなくなって、苦しくてずっと泣いていた。


巡る春。輝空と別々のクラスになった。
まったく話す機会もなく、廊下や体育館で姿を見ては目が離せない日々。
もう大丈夫。と思っていても、その度に輝空のことでいっぱいになる。

そんなわたしは、剣道の三段昇段審査に落ちる始末で。
思いが巡り、寧音と尊は春休みの間に別れてしまった。


「歩舞……あたしはまだ諦めないよ」

決意を決めた目を前に向けて、寧音は寧音なりに前へと進もうとしている。