《大切なあゆむへ。

あゆむに出会って大切なことをたくさん知ったよ。
俺が野球を続けたら和を乱す、そう思って悩んだ時期もあったけど。お前がそばにいてくれたから乗り越えられたんだ。
部活を引退するその日がくるまで、俺はずっと、ずっと走り抜いて。
最後の夏、必ず約束を守ってみせるよ。

お前を泣かせてしまったわがままな俺を
許さなくていいから。
お前は、俺のこと忘れて幸せになれよ。
今までありがとう。

野球バカより。》


ヒューゥー……ッド―――ン、ド――ン……



フィナーレの花火が始まっても、しゃがんだままそこを動くことができなかった。

寧音はわたしに手を差し伸べてゆっくりと歩きだす。尊と譲治が途中まで探しに来てくれていた。


帰り道の譲治の長い説教。
慣れないゲタの靴ずれと何かを言いたげな尊の目。
いろんなシロップをかけたかき氷。
寧音がくれた絆創膏。

わたしが人混みの中で見たあの姿は輝空ではないかもしれない。
もしかしたら……あの言葉花火だって輝空が送ったものではないのかもしれない。

それでもわたしは、輝空に出会えたことを好きになれたことを、愛しく思わずにはいられなかった。

輝空?
わたしに見える世界はとても小さくて、あなたがいないと息が詰まってしまうんだよ。



***

尊が浮気を始めたのは花火大会から少したった頃。
寧音がそのことを知ってしまったのはそれからもっと後の話で。

わたしが野球部のエナメルのバックについたミサンガの存在に気づいたのは、ちょうどそんな時期の中頃のことだったと思う。

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