その時、何も考えていなくて。
姿を見失って立ち止まった時初めて、わたし何してんだろう。と、我に返って悲しくなった。

名前を呼びたくなった。無性に伝えたくなった。まだ、わたしは君を──……と。


《──……れでは、最後の花火になります。今大会、恒例となりました──……》

言葉花火。

『一発の花火に、大切な人に向けたメッセージを打ち上げてもらえるんだよ』

わたしの想いを伝えたくて──……

ヒューゥー……ッド――ン…………


《──……入院中のおばぁちゃんへ。》


「歩舞‼どうしたの!?」

寧音が駆けつけた時、わたしは大きな大きな尺玉の花火を見上げていた。

「ねぇ、寧音」

「なに?」

「寧音はどんなメッセージを送ったの?」

わたしの問いに、寧音は少し照れた顔をして教えてくれた。

「ずっと、これから先も尊のことを好きでいるから、いつかお嫁さんにしてね……って送ったの」

ヒューゥー……ッド――ン…………

「そっか……絶対、寧音たちならなれるよ」

寧音は笑って嬉しそうに、うん。と言って、歩舞はなんて送ったの?と聞いた。

「いつも、応援してるよ……って」

いつも、応援してます。
きっと君はそんなわたしに気づかないんだろうけど。それでも、野球を頑張る君をこれからもずっと、ずっと──……

ヒューゥー……ッド―――ン…………