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花火が始まったのは日が落ちてからだった。

ッドーン──……ドーン――……


「歩舞‼はぐれないでね」

交通規制のかけられた川沿いの道に人がにぎわう。寧音はわたしの腕を掴んではしゃぎながら先頭を行く。
屋台の照明が並ぶ道を寧音、尊、譲治と一緒に歩いた。
後ろを歩くお祭り嫌いの二人は、対して歩いてもいないのに疲れきった顔をしている。

「おい、寧音、そんな先行くなよ」

声に反応した寧音は、カラコロとゲタを鳴らし浴衣姿の尊の横へ戻った。幸せそうに尊を見上げる寧音は健気で少し不安にもなる。

尊からあんな話を聞いて以来二人を見ていると、あんなに幸せな今もいつか崩れる時が来てしまうのかな……と、自分の夢が目の前で壊れていく様子を見ているようなそんな気になってしまう。

「本人たちのことだから口をはさまない方がいいんじゃね?」

そんなわたしの横で、譲治はわたしをなだめる。

わたしに出来ることはとりあえず、笑って寧音の肩に手をまわして歩く尊を信じることくらいしかなかった。