次の日。オハヨウの四文字をいつもと変わらぬ笑顔で口にする寧音を見て、一瞬でも尊に抱きしめてもらいたくなってしまった昨日の自分を思い出し罪悪感を感じてしまった。

どうか、尊が浮気をしませんように。
授業中、寧音の背中を見つめてそんな神頼みをして……
わたしはその日、久しぶりに勇気を出して輝空にノートなんかを借りてみた。


「あぁ、いいよ」

短い会話だったけど、死ぬほど緊張した時間が懐かしい。
手渡された時に微かに触れた輝空の指先。それだけで胸が苦しくなる。

開いた日本史のノートに、昔描いたいたずら書きがそのまま残っていたことが小さな喜びだった。