交通量は少ないこの時間、輝空くんとわたし以外人影は見えない。
わたしは野球部の指定バックを肩にさげて自転車の後ろに乗る。
目の前には大きな背中があって、見た目はスッとのびた背丈で一見、細身に見えていた。けど実際はしっかりした体つきなのだと気付かされる。

沈黙の二人。だけど、何かその沈黙に輝空くんの暖かさを感じた。
ちゃんとしなきゃ……そう決めて『止めて』と声をかける。

「忘れ物?」

輝空くんは様子をうかがうように少し振り向く。

「……ううん、違うの。……ごめんね、この前逃げて……」

顔を下に向けながら自転車から下りたわたしは、鼻をすすりながら続けた。

「わたし……輝空くんの事、嫌ってないから‼だから……」

顔をあげると輝空くんと目が合う。

「だから……これからも友達でいたい……」

「……ごめん」

「え……」

驚いたわたしの心臓はズキンと、音をたてた。