いつもの2人乗りのブランコがなかった。しばらく来ない間に撤去されたらしい。だから、今日は一人乗りのブランコに座った。
いつもと違う距離が別れを表しているようなそんな気がする。

バイクから降りてから一言もしゃべらない輝空。それはわたしも同じ。
暗いお宮に沈黙が続く。言葉を出そうとしても喉で止まってしまうんだ。

「何か……しゃべれよ」

先に苦しそうに声を出したのは輝空。それでも、なかなかわたしは返事を返せずにいた。
それでも言葉にしなくては何も進まない。目をつむり力をこめる……

「嫌だよ……」

やだ、そんなの嫌……なんで?
それしか言えないわたし。言いたいことは山ほどあったのに、声に出せないもどかしさ。

会わない間、あんなに流していたのに。なぜ、こんなにも溢れ出てくるのだろうか。
そんなわたしを振り返らずにいる輝空。わたしも直視できなかった。
きっと、困った顔をしていたんだろうな。

言葉のないやりとりが、木々のざわめきの中ひたすら続いた。