「なんだかわくわくするね‼」

寧音の声にどんな返事を返したのか覚えていない。
暗くてよかった。ずっとずっと、涙の止め方がわからないままでいたから。


暗闇にもなれた頃、爆発音と音響と同時に鼓動が高なる洋楽が流れ初め学園祭が始まった。

何モ見エナイ、何モ聞コエナイ……
あぁ、わたしはここでなにをしているんだろ。

生徒会長の言葉、隣に座る寧音、輝くステージ、もうすでに床に捨てられているプログラム、能率の悪い扇風機。

たぶん、あれであろう前側に座る背中。
喪失間、無心の世界。ただ、ただ流れる気持ち。


『手、あったけぇなぁ』

そう言ってくれたのは夢だったのか。ここにいる自分が夢なのか。
問いかけても、返ってくる言葉は無いということをわたしは知っている。


「何かあったの?」

さっきまで華やかな他クラスのステージ発表に意識を向けていた寧音が、知らない間にわたしを見つめていた。
なんでもないよ。と急いで涙を拭こうとした腕を寧音が掴んだ。

「何でもないって言った時の歩舞は、絶対何かがあるの」

……って、いつも譲治が言ってたよ。
そう言ってわたしを掴んだまま椅子から立ち上がり、会場の隅へと歩き出す。

音響機材の横に座り輝空とのことを話した。
うまく、声が喉から出ない。言葉になっていないようなわたしの声音をずっと隣で聞き続けてくれた。
けど、寧音の顔がぼやけてしまってよく見えない。