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学園祭の前日、メールで距離を置こうと言われ、目の前が真っ暗だ。
学園祭の2日目は夏の大会の1回戦。
試合の前に迷惑はかけたくなくて、
【わかった。応援してるから】
それだけ送った。

止まらない、止まらない……やめて。
止まってください、流れないで。今は泣きたくない……。溢れ出ても、涙を拭ってくれる人はいないんだから。




いつもと同じ朝の陽射しに目が覚めた。
冷たい水で顔を洗い、乾いたタオルに隠れていた腫れぼったい目が鏡に映る。

「不細工にもほどがあるだろ」

そう呟いて、歯ブラシを取り出し磨く。
後からバタバタと洗面台にやってきた姉にバレないよう涙をぬぐった。

涙を止めることが出来ないまま、学校へと歩く。



なにげなく通ったお宮の前。
静かにザァザァと動く木々の声を不気味とはもう思わない。

ギィギィと小さな風音に揺れる二人乗りブランコ、誰もいない石段の上。全部、あの人との思いであふれているから。

わたしはこんなにも輝空が好きなんだ。
そう気づいては冷たい何かが頬をぬらした。



学校には集合時間ぎりぎりに着いた。
早く行かなきゃ‼と、クラスTシャツに着替えるわたしを寧音は急かして腕をつかみ体育館へと移動した。

暗幕が張られ人が集まり蒸し暑い。
360度の闇とは不似合いなあたりのざわめき。逃げられない虫カゴの中のようだと思った。