いつもそう。帰る時にはバイバイ、ってちゃんと言わなきゃ気がすまない。
そんなわたしを尊はまめな子だねぇ、といつだか笑っていた。

玄関から出て来た輝空は、窓からのぞくわたしに気づき、手を振っている。


「歩舞、職員室にティーシャツ届いたって」

「はいよー」

背中から聞こえた声にわたしは振り向いて、寧音のもとへ駆け寄った。




夏の大会がもう近い輝空には頑張ってもらいたい。

「輝空くんのノロケ話もいいけど、歩舞も頑張らなくちゃだよ」

「え、いや、のろけてるわけじゃ……」

一週間前に発注したクラスTシャツの入ったダンボールを、寧音と一緒に教室へ運ぶ。両手で抱えたダンボールは大きくて前がよく見えない。

「最近、歩舞って委員長って感じだよね」

寧音の方を向こうとしたら横を通る人にぶつかりそうになったので、そうかなぁ?と振り向かずに返事をした。

「野球部も学園祭出れるといいね」

鼻歌を歌いだした寧音の隣で、わたしはステージの上でダブルダッチをする姿を想像した。

軽快な音楽とカラフルな照明。
二本の縄を回すわたしと、順番に跳んでいくクラスメイトたち。
みんな楽しそう。客席の人たちもリズムにのっていて、その中で輝空とわたしは笑っている──……


「……うん。どうせなら、みんなでステージ発表したいよ」

一度、足を止めて抱えていた荷物を抱き直す。
そうだよね‼と、笑う寧音の笑顔を見て楽しい未来が欲しいと、強く思った。


「屋台儲かったら、あたしはみんなで焼肉行きたいなぁ~」

「そこまで儲からないよ」

わたしと寧音は、みんなの待つ教室へ再び歩き出した。