「輝空のこと、誰よりも一番知っていたいの」

でも、調べて知るなんて嫌。
輝空の口から、輝空の言葉で聞きたい。好きな人のことはなんでも小さなことでも知っていたい。
そう思うわたしは欲張りなのかもしれない。


「……直央もそうだよ」

キャッチボールを始めた寧音と尊の様子を見ながら咲は話し始めた。

「何も教えてくれないの。誰かとケンカしたり、悩んで落ち込んでたって、私が知るのはいっつも事が過ぎた後」

男の子はずるいよね。
憂い混じりに微笑む咲の顔に、なぜか優しく見守られているような感覚を覚える。

「直央はプライド高いから、私に弱い部分を見せたくないんだと思う。
付き合い初めの頃は、何でも話してくれていたのにね」

フワッ──……と、窓から久しぶりの風になびいたカーテンがわたしと咲の間に入る。
その状況に笑ってカーテンを寄せる咲に、それってやっぱり、咲も寂しい?と、聞くと咲はしばらく何も言わずにカーテンの裾を見ていた。

「寂しくない……っていったら嘘になる。でも、そうやって……」

そこまで言って、いつかわかるよ。と、咲はわたしに笑う。
咲の言葉は、遠い遠い未来にいるわたしに向けられているようなそんな気がした。