次の日も、荷物を詰め込むわたしに笑ってバイバイ、と笑顔で手を振る寧音に「今日は行くよ」と、告げると寧音は表情をピタッと止めて急に泣きだした。

「みんなぁ~歩舞がぁ~ッ‼」

大きな声をあげる寧音の声に、机を後ろ側へ下げていた生徒たちが一斉にわたしたちを見た。
恥ずかしんだわたしを笑ってくれて。
誰かに引っ張られて、委員長が廊下から教室に入ってわたしのそばに寄る。

「ごめんな。その……なんつーか、お前、一人にさせて」

言葉選びに頭を抱える委員長を見て、思わず笑ってしまった。

目をこする寧音。

「ずっと待ってたんだ。あたしが戻ってきて、って言って戻ってきても意味がない気がして……だから……」

戻ってきてくれてうれしいよ。そう言って寧音は白い二本のロープを渡す。

「やっぱり、これ回す人は歩舞でなくちゃね‼」

寧音の帰り際の笑顔は、決してわたしに孤独を感じさせるためにそこにあったんじゃなかった。わたしを待っててくれたんだと、この時やっと気づいた。


その日、練習の前にお披露目会をしてくれたクラスのみんな。目の前で繰り広げられるたくさんのパフォーマンスに感激し、申し訳なくも思った。

「ごめんなんて言うなよ。お前がいなきゃ……今、こんな風にできてねぇんだからさ」

わたしのいなかったあの数日の間。
寧音や委員長は放課後、クラス全員を呼び止めて話し合いをしていたそうだ。
わたしがいつ戻ってきても恥ずかしくないように、わたしをびっくりさせるように、と。

『歩舞が戻るまでずーっと練習を続けていたんだよ』
……と、寧音がわたしに教えてくれたのはだいぶ後になってからの話。