どれくらい走ったかな。対して、長くない距離だったと思う。わたしは目をつむって背中にぴったり寄り添っていたから。


「着いたよ」

たどり着くまでどこへ向かっているのかわからなかった。
ここは……野球部のグラウンド。

「なんで……?」

「来いよ」

バイクに乗ったままポカンとするわたし。
輝空はポケットに手をやり少し進んで立ち止まっている。急いで駆け寄った。

「どうしてこんなところに来たの?」

聞いてもその横顔は、ただ微笑むだけ。

フェンスの外側からしか見たことのなかったグラウンド。整備されたその内側に入れば、壮大な広さを感じる。
いつもここで輝空は走っているんだね。

グラウンドの中心を過ぎ、端から端へと横断するように歩いて輝空の姿の先にフェンスに開いた穴を見た。
そこから先は草だらけの道……。道なんてない、と言った方がいいのかもしれない。

先にそこをくぐった輝空は、躊躇うわたしに手を差し伸べる。虫が泣いて草が擦れる……そして、川の音が聞こえた。