「2年前は、寧音たちと行ったんだ」

歩きながら、当時のことを思い出して
少し笑った。
その後くらいから尊が寧音を意識し始めて、わたしと譲治が優柔不断な尊をバックアップしていたんだ。

「でも多村は気づいてなかっただろ」

わたしは、ご名答‼と、笑った。


二手に分かれたウォーキングコースを
左に行く。見えてくる石橋、木目のベンチを過ぎれば少し開けた川辺。

「そろそろだよ‼」

二年前、ホタルがたくさん見れた穴場に輝空をせかして歩く足を早める。

「ここだよ‼」

わたしの指さした方向を、輝空が見上げる。わたし達がたどり着いた場所には……ホタルはいなかった

流れる川音、暗くて奥まで見えない散歩道、遠くの電灯の光り。やり場のないわたしの人差し指。

「……まぁ、予想もしてたことだし、仕方ねぇかな。また来年こような?」

その優しい言葉が輝空らしくて、やるせないわたし。
どうしても、今日がよかった。
明日から輝空の気持ちは、わたしよりも野球に傾いてしまうから。だから……期待が想像のままで終わってしまったことが悲しかった。



「帰ろっか?」

「……ん」

輝空は落ち込むわたしを励まそうとしてか、味気ない帰り道をずっとわたしに声をかけて話が途切れないように気を使ってくれていた…………気がする。


コンビニへ戻ってバイクの横に立ち、メットインからメットを取り出す輝空の姿をしばらく眺めていた。

「それじゃあ、また月曜日」

「うん、バイバイ」

サヨナラくらいは落ち込んだ顔じゃなく笑顔にしないと、とわたしは笑って手を振る。
輝空は、申し訳なさそうに笑ってヘルメットを被った。

キーに手をやりエンジンを……


「歩舞」

時間まだ大丈夫?

大丈夫だけど……?と小さく答えると、わたしを乗せてバイクを走らせた。