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輝空が合宿に入るのは土曜日。
だから金曜の夜、今夜は絶対ホタルがいて欲しいと願ってコンビニで輝空を待った。

電話がワンコール鳴ればそれは輝空が着いた合図。急いで外に出ていつも一番最初に言う言葉を口にする。


「部活、お疲れさま」

バイクを駐車場の隅に置いて公園までを歩いた。
目指した近所の公園は毎年、夏の始めに愛護していたホタルを放流する。

「一週間くらい、時期ずれてるけど……いるといいな」

そう言って、手を繋いでくれた。

学校でも繋いで欲しいな。
そう思ったけど、輝空は学校内でベタベタするタイプではないとわかっていたので欲は出さないことにした。
本人に言われたわけではないけど、なんとなくわかる気がしたから。



たどり着いた夜の公園は暗くて人影はなかった。

「ちょっと不気味だね」

「じゃあ、ホタル観賞会はやめて肝試しにするか‼」

わたしが輝空の手を強く握るとふざけてそう言い出したので、わたしもふざけて大げさに叩こうとするポーズをとってみせる。

真っ暗な木々の道は怖いけど、輝空が隣にいることがわかるから安心できた。