一階の端にある小さなスペースには、大学や専門学校のパンフレットや就職情報誌、ビデオやパソコンも設備されている。
窓は換気のため開いていた進路室。
堀田ちゃんに持たされた資料をひとつひとつ棚の中へ戻していく。

その時、廊下から話し声が聞こえた。

『……じゃぁ頼んだぞ』

『はい』

去っていく足音が一つしたのを聞いて、ガチャッとドアを開けて顔を出してみた。

「野球部のエースが怒られてやんの」

「怒られてねぇから」

思った通り。廊下にいた輝空くんはわざとツン、と睨んでから笑顔を見せた。

「歩舞はそこで何してんの?」

「堀田ちゃんに頼まれたのー、いい子でしょ♪」

「どーせ食いもんかなんかでつられたんだろー?」

なんでバレたんだ、という顔で立っていたらやっぱりな、と言いたげな感じに軽くにやついて中へ入ってきた。
戻しかけの資料に目を向け、一つ手に取り戻してくれる。