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いつも笑っていたわたしと輝空には、喧嘩なんて言葉は無縁だとすら思っていた。

輝空が笑ってくれたらそれでいい、それがわたしの幸せ。輝空もきっと同じだろう。
幸せの中に生きていてわたしはそんな風に思っていた。





「マジ、ムカつく‼」

バンッと、わたしの机を叩いたのは寧音。

「ぉ、おかえり」

寧音の荒れように驚き、読んでいた雑誌を閉じる。どうしたの?と、聞かなくては場違いな状況だ。

「尊ッ‼マジ、ムカつく‼」

あぁ、尊か。
いつものことか、と心の中で思い雑誌を開き直した。荒々しく椅子に座って、寧音は足をバタつかせている。

「何があったの?」

「なんか誰かがね、あたしがクロとシロとよくしゃべってること尊に教えて、あたしはそんなんじゃないのに、尊は調子のんな‼とか言って怒ってるの……‼」

はぁ?って感じでしょ!?と、長々とグチを言い終えた寧音は肩を落として完全燃焼した様子。
シロとは、寧音の隣の席の男の子。名字が白井だから、寧音がシロと呼び始めたんだ。